「悔しい思いばかりをしてきた期間が転機になっている」インタビュー:ユーフォニアム奏者 新井秀昇さん






日本だけでなく世界を股にかけて活躍中のユーフォニアム奏者、新井秀昇さん。2021年には3枚目のソロアルバムもリリースし、波に乗っている奏者です。

今回はそのアルバム「ユーフォニアム・アラカルト」のことも含めて、色々とお話をお伺いしました。

 


-まず最初に、ユーフォニアムを始めたきっかけについてお伺いできますでしょうか。

中学校の吹奏楽部で最初はテューバを担当していましたが、2年生に上がる頃ユーフォニアムの子が転校して演奏者がいなくなってしまい、それでユーフォニアムをやることに。そこからずっとこの楽器を演奏しています。

-ご自身が考える「ユーフォニアムのこういうところが好き」という点についてお伺いできますでしょうか。

まずはなんと言っても音です。ホールやアンサンブル内で吹く上で、その響きや音圧については工夫しなくてはいけないことも多々ありますが、音色自体はいつも魅力的です。

そして、僕自身のやりたい音楽や活動にフィットした機動力や音域の広さです。

-学生時代(10代~20代頃)はどのような学生時代を送られましたか?またその頃で特に想い出深いエピソードなどございましたらお伺いできますでしょうか。

中学時代はとにかく部活部活でした。右も左もわからずただただがむしゃらにやっていたように思います。最初は情報が少ない上、楽譜の読み方すらわからなかったので、とにかく身近にある教材を片っ端から読んだり練習したりしていました。音楽の基礎を学ぶ上で一番助けになったのは授業の教科書でした。

中学3年のころからプロの音楽家への道を考え始め、高校では部活に入らず自分で練習していたのですが、間違ってバリバリの進学校に入ってしまったため授業が終わって帰宅後は殆ど練習時間をとれず、休日しかまともな練習が出来ない日々が続きました。今思えば部活に入って青春したかったなぁとも思います。また、予習復習をちゃんとしないと授業についていけない学校だったので、ちんぷんかんぷんになってしまうことばかり。数学など、懸命についていこうと聞いていても脳内回線がショートしていつの間に寝てしまっている、ということもしばしばありました。せっかくの高校教育を殆ど享受出来ず、今でも困ることばかりです。もっと自分のスタイルにあった高校を選べていたらよかったなぁと後悔しています。

大学ではいよいよ大好きな音楽を目一杯学べて、そして何より練習し放題ですので、とにかく毎日が楽しかったですね。今思えばもっとあれこれやっておけばよかった・・・ということは山ほどありますが、それでもたくさんのいい時間を過ごせました。

エピソードは多々ありますが、大学時代に初めて海外に行き、音楽はもちろん、たくさんの人々、文化、風土、考え方等に触れたことは、その後の人生に大きな影響を及ぼしているかと思います。

-日々の練習の際に心がけていることや気をつけていること、または重点を置いていることを教えて下さい。

ファンダメンタルでは、日々バランスのいいメニューをこなすことと、西洋音階は出来る限り毎日全調色々なパターンで練習するようにしています。また、時間がある日は少しずつ他のスケールも増やしています。気を付けていることとしては、どの音も同じようにベストクオリティで鳴っているようにということ。

楽曲の練習においては、その時々のシチュエーションで変わってきますが、いずれにせよそれぞれの音楽的なことにフォーカスするようにしています。

-ご自身の演奏家・表現者としての活動、例えば音楽に取り組む基本的な姿勢、演奏会や後進への指導などについて現在お考えになられていることをお伺いできますでしょうか。

新井自身の活動としては、いつもやりたいことがたくさんあります。また、それらはもちろん年々変化し続けています。

やりたいことを実現させるためには、相応の積み重ねや準備が必要になるかと思います。根本的にやりたいことを実現するための演奏スキルが必要ですし、スタイルや感覚、知識等、事柄によってさまざまなことが必要になってきます。

-活動する中で、上記のお考えにつながるような「これは転機になったな」と思われることがございましたら、その想い出やエピソードについてお伺いできますでしょうか。

転機といえば、まず間違えなく洗足学園音楽大学に入ったことだと思います。

今ほどではありませんが、洗足は当時から様々なコースや他大では見られない授業、取り組みがあり、それらのお陰で視野や興味を広げてもらったのは言うまでもありません。

そして、学生時代から20代中ごろにかけてはその沸き起こってきた興味を「やりたい!」の気持ちだけで向う見ずにチャレンジしていたように思います。もちろん、そういった行動力は大切ですしその後の活動に活きている部分も多々あるのですが、その中で数えきれないくらいの失敗をしてきました。そうして年々活動を重ねるにつれて「やりたい!」の気持ちだけでは表現活動は成り立たないのだなと痛感するようになってきました。思うにつれて、一つ一つの活動に対しての準備の仕方も変わってきましたし、普段の行動にも変化があったように思います。そう考えると、その悔しい思いばかりをしてきた期間がまた転機になっているのかと思います。

-2021年10月には3枚目のソロアルバム「ユーフォニアム・アラカルト」が発売されましたね。まずはこのCDの聴きどころや、「こんなところに注目して聴いてもらうとより楽しめそう」というようなポイントをお伺いできますでしょうか。

これまでの2作「NASOTA」、「くもり時々雨のち晴れ」はコンセプト・アルバムとは言わないまでも、アルバム全体を通しての構成感やテーマを意識した作品になっているのに対し、「ユーフォニアム・アラカルト」はもっと気軽に誰もが楽しめる小品集として制作しました。

その名の通りレストランのアラカルトのように、気の向くままお好きな一品をご賞味いただければ、と思っています。

-最後に、アマチュア奏者の方や愛好家の方に向けて今一番伝えたいメッセージをお願いします。

コロナ禍でまだまだ自由な活動が制限されている状況ですが、こんな時だからこそ僕たちが愛する音楽がたくさんの力を与えてくれていると思います。

出来ることからでいいので、是非一緒に頑張っていきましょう!

また、音楽は聞けば聞くほどその感覚は豊かになり、より楽しみや喜びも増します。そしてもっともっと好きになります。もちろん演奏におけるイマジネーションにも直結してきます。コンサートに足を運ぶことにまだ抵抗を感じる方もいらっしゃるかとは思いますが、CDやストリーミングサービスなど、家に居ながらにしても素晴らしい音楽に触れることが出来ます。

世界は無限の音楽であふれています。その中から是非皆さんの心震わす音楽をたくさん見つけてみてください!

 


インタビューは以上です。新井さん、ありがとうございました!

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